急瀬竿

釣り

弧で操り、弧で誘い、弧で仕留める。

■操作性とオトリのなじみを追う。

6代目メガトルクの開発に深く関わる瀬田匡志は、フラットな流れのポイントが多いフィールドであれば、スペシャルMTと競技A XHの2本を軸に、数々のトーナメントに参戦したりプライベートでの釣りを楽しんでいた。スペシャルMT(プロト)では2015年のロケで32.4cmを仕留め、競技A XHでは昨年のマスターズでV3の快挙を成し遂げた。2つのロッド特性と、瀬田の経験値。これが新しいメガトルクの礎となる。
「今回は『パワーロッドだから』という言い訳や逃げ道を一切絶って、競技会で使用される最新鋭ロッドに匹敵する操作性やオトリのなじみを、どうすれば引き出すことができるのか?ロッド開発チームと何度もミーティングを重ねました」
スペシャルMTは7本継ぎによる圧倒的な曲がりのスムーズさと粘り、タメ性能。競技AXHは軽快さを維持しながら良型オトリも意のままに扱える操作性の高さ。両方のエッセンスを注入し、どう進化させるべきか… それがテーマとなった。

■ムチの如く曲がる“粘靱ブランクス”。
さまざまなシミュレーションとテストの結果、ある結論に到達する。ロッド先端の硬さを維持しながら小さな負荷でも曲がり、負荷が大きくなるにつれてバットまでスムーズに入ること。
たとえばソリッド穂先がオトリのなじみと引きやすさに優れるのは、小さな負荷でもソリッド部分が曲がることで、オトリに不均一なテンションや振動を与えないから。
これを8本継ぎのメガトルクに反映させるためには、ESSやスペシャルVジョイントにVコブシ+チャージリングほか、ダイワのテクノロジーをフル活用する必要がある。そして幾度となくトライ&エラーを繰り返し、「意志を備えたムチ」の如く、理想的に曲がり込む“粘靱ブランクス”を手に入れた。
前作と振り比べれば、今作の方が張りが強くむしろ硬く感じられるが、曲げると元まできれいに入り込む。小さな負荷でも、それに合わせてスムーズに曲がることで、押しの強い流れにもオトリがなじみ、軽く引ける。オモリや背バリが必要だったポイントでもノーマル仕掛けですんなりと入り、これまでにない自然な動きを演出できる。
その点も含め、鮎を掛けるまでは一切「パワーロッド」と感じさせない、軽快で正確な操作性能を持つ。

■曲がるから獲れる。緻密に掛ける。
 そして逆説的に聞こえるかもしれないが、今まで以上に元竿まで曲がる調子にしたからこそ、掛けた後の性能も向上した。
ESSやスペシャルVジョイントを始めとする数々のテクノロジーで最新のカーボン素材、スーパーSVFナノプラスを曲がるように作れたからこそ、生まれる反発力も強大。これを十分に利用すれば、腕力に頼らなくても、竿の反発力で軽くスムーズに抜くことができる。
実際に神通川や九頭竜川などの人気河川では多くの人が立ち込み、一歩も動けないことが少なくない。そのような中で、従来ならノサれてしまう状況でも、ロッドがしっかり曲がって強引をとめ、そして浮かせてくれるので下らずに獲れるのだ。
階段状の流れなら抜きどころは数あるが、一気に駆け下るような押しの強い流れでは、ロッドの曲がりを利用しなければ掛かり鮎が水を切らず、獲るのは難しくなる。ただ硬いだけで曲がらない竿だと、トラブルを恐れて仕掛けを必要以上に太くせざるを得ない。それでは、瀬田の目指す瀬釣り、そして理想的な瀬竿のイメージとは、大きくかけ離れたものになってしまう。曲がりにこだわったのは、ここに理由がある。

メガトルクにしか出来ないこと。強い流れを広範囲に探る 瀬田流『ダウンクロス釣法』

釣り人の下流にオトリを送り込み、シモ竿に構えて川を横切らせる操作は、かつて11m竿を駆使した「カニ横釣法」で一世を風靡した村田満以降、多くの鮎師による実践、改良、進化が続けられてきた。基本的な考え方はカニ横釣法と同じだが、これを激しい流れの中で実践しているのが瀬田匡志だ。
オトリを横切らせる操作がいきる流れは、基本的には石に大小の差があまりない、平瀬までのポイントになるが、流れが強く、深く、鮎が大きくなると、シモ竿で掛けたときにノサれてしまい、取り込むことがきわめて難しくなる。

押しの強い瀬で、この釣りを可能にするためには、ロッドの“粘り強さと繊細さを兼ね備えた曲がり”が大きく関与する。超シモ竿で大鮎を掛けても耐えうる極限のタメ性能だけでなく、水中糸の流水抵抗を利用した操作も可能な、繊細かつ計算された曲がりを備えていること。今までその様な竿は無かったため、シモ竿で掛けた際のリスクは鮎師の技量でなんとかカバーしていたのが現状だったが、今回のメガトルクは、そんな技量やリスクを伴わずとも簡単にやってのけるロッドに仕上がっている。
荒瀬の中を超シモ竿状態から扇上に引き上げ、広範囲を横の泳ぎで誘う瀬田の釣り、いわく、ダウンクロス釣法を多くの人に実践してもらうためにこの竿が生まれたといっても過言ではない。

■水中糸の抵抗を取る感覚でオトリを引く。フラットな流れの中で、効率的な攻めを展開。

それではダウンクロス釣法の手順を見ていこう。狙うポイントは、石の大小の差が少ないフラットな瀬が向いている。 瀬田は言う。
「フラットな川ってどこに鮎がついているか分からないじゃないですか(笑)。だから横に探ることで手前が釣れるのか、沖が釣れるのかが分かります。直線的に引くだけだと、なかなかそれを見つけられない。大会でも効率よく、広範囲にスピーディーに探れますしね。そして、横に出て行くときのオトリの姿勢がいいんです。オトリが頭を下にして横に泳ぐ仕草が、野鮎から見たらコケを喰む仕草に見えるのか、強烈に挑発してくれます。」
まずはオトリを目一杯下流へ送り込む。この時、空中輸送を駆使してもいいだろう。そして超シモ竿状態からロッドを寝かせて少しずつ上流へ引き上げる。このとき注意したいのは、意外かもしれないが穂先を強く利かせないこと。グイグイとオトリを引くのでは無く、むしろ水中糸の余分なテンションだけをとるイメージで操作して欲しい。
「釣り人が操作して沖へ出しているように見えるんですけど、流れの抵抗で水中糸が穂先の方向に引かれ、そのテンションに引っ張られる形でオトリも竿下に向かい泳ぐんです。なので、強引に鼻先を引いてるのではなく、水中糸が誘導している。それがオトリの動きをベストの状態にすると思うんですよ。きれいに斜め対岸に向けて、スッスッと尾ビレを振りながら自然に出て行きますね」
そこから上流にオトリを引き上げれば、次第にロッドの角度は鋭角に近付き、今度は手前に戻る横の動きを演出できる。これだけ超シモ竿から鋭角まで、野アユの付き場所を幅広く探る事で、釣れるポイントや泳ぎのパターンを見出し、一見変化の無いフラットな流れでも、効率的な攻めが展開できる。

■アタリを感じればロッドを絞り込み、素早くフルパワーの状態へ持っていく。

ダウンクロス釣法での最大の課題といえるのが、シモ竿で掛けたときの対処である。メガトルクの性能を最大限発揮させるには、何よりもロッドを「曲げる」ことが重要だ。
特にアタリを感じた瞬間に上流側にロッドを絞ることだと瀬田はいう。「アワセ」と呼んでもそれは差し支えないほどだが、早い段階でロッドを大きく曲げ、パワーを溜めこませ、反発力を発揮させることが狙いだ。また、絞ることでアタリを感じた位置よりもカミ竿に近くなるため、そのまま竿を立ててもタメが利く有利な体勢に持っていけるのだ。
ときには瀬田も不意の大物に苦戦することはあるが、少し下って体勢を立て直すにしても、今回のメガトルクは「曲がる」ことで許容範囲が広くなっている。
獲るために積極的に曲げること。窮地に陥ったときに曲がること。曲がりに2つの意味を持たせた攻守一体のロッドだからこそ、こう言える。
「メガトルクにしか、獲れない鮎がいる」と。

アイテム別特徴

急瀬抜】

メガトルクに君臨する絶対王 リフトパワーは尺を抜く          

パワーランク       急瀨抜    対象サイズ           20~27cm

 今作の過剰なまでのリフトパワーは、徳島県吉野川で30.5cmを抜いた森岡によっても証明された。「前作よりも意図的に曲がるようにしたんだけど、曲がるからこそ反発力も出て、もっと抜きやすくなりました」。すべてのパワー系ロッドの中心的存在、“キング オブ メガトルク”。

■カーブ比較
 大鮎も含めた、競技メガトルク全アイテムのカーブ比較。マスターエディションMTは早瀬抜と急瀬抜の中間のパワーとなり、急瀬抜XHは大鮎に匹敵するパワーを備える。

※コンピューターの解析上のデータであり、実際の曲がりとは多少異なる場合があります。

■ソフトタイプSMTチューブラー標準替穂先
 小型サイズが混じる時や、止めの釣り、ゼロテンション周辺をコントロールする引き泳がせ釣りなどに最適な、しなやかながらも適度にパワーと操作性を兼ね備えた、ソフトタイプのSMTチューブラーを標準で付属。

DAIWA TECHNOLOGY

■感性領域設計システム『ESS(Expert Sense Simulation)』

ロッドが曲がった際に発生する復元力(ひずみエネルギー)を解析・設計するダイワ独自のシステム。「どこがオーバーパワーか」「どこがパワー不足か」を数値で明確に把握するだけでなく、通常のベントカーブには現れないエキスパートの「感性」と呼ばれる領域までロッドに反映させることが可能。理想を超える竿を作り出す、革新的ロッド設計システム。

■S-SVFカーボン

ダイワはロッド性能にもっとも影響を与えるカーボンシートにおいて、繊維そのものの高弾性化は勿論、カーボン繊維を取りまとめる接着剤的な役割を担う樹脂(レジン)量に対する機能向上に着目。贅肉ともいえるレジンの量を減らし、筋肉となるカーボン繊維の密度を高めることで、より強く、より軽く、より細いロッドの開発を進めている。「Z-SVF」は、素材の製法を一から見直し研究を重ね、理想的なカーボン繊維配列を実現したダイワ史上究極の高密度カーボン。

■X45

カーボン繊維の巻き角度は竿先に対して0°・45°・90°がそれぞれ曲げ・ツブレ・ネジレに対して最大の弾性を有する。他のX構造のように中間の角度にした場合、それぞれの弾性が低いためパワーロスの原因となる。また中間の角度で「X45」と同等のパワーを発揮させるためにはかなりの重量アップが必要となる。最も弾性率の高い3つの角度を採用している「X45」はロッドの変形を防いでパワー・操作性・感度を向上させる最適構造なのである(世界共通の商標として「Xトルク」から「X45」に呼称変更)。

■チャージリング

『チャージリング』とは、特殊なカーボンシートをブランクに巻き付けて“仮の節”を設ける構造。ノーマル節に採用すれば、自重を大きく変えずに「曲がりのアクセント」を生み出し、Vコブシに近い効果をもたらす。

■スペシャルVジョイント(♯1~3はVジョイント)

パワーロスが生じがちな節の合わせ部にダイワ独自のバイアス構造を採用することで、ワンピースのような美しい曲がりを可能にし、負荷が掛かった時の節の歪みを抑えてパワーロスを減少させることに成功。さらに従来必要とされていた合わせ部の重ね代を極限まで減らしたのがスペシャルV-ジョイント。これによって重量を軽減しながらいっそう歪みの少ないロッドを作り上げることができる。

■Vコブシ設計

先端部#1~#3を短くセッティングすることで竿先の安定性を高め、感度の向上を図る設計思想。同時に中節~元竿は節長が長くなる胴長設計と組み合わせることにより、パワーと操作性・感度を兼ね備えたロッドを実現。

■スーパーリング構造

カーボンシートの巻き始めと巻き終わりの重なる部分の重なりシロを限りなくゼロに近づけてロッドを形成する技術。軽量化はもちろん、繊細なロッド操作や引き抜き時の弾道が安定。

■ゼロコーティング(♯4~元上)
 カーボンの素材感を残しながらも、鮮やかな色彩を放つダイワ独自の外観処理。無塗装に極めて近いため、カーボン素材の性能を十二分に発揮させることができる。※節または部位で、使用するカーボン素材の影響等により濃淡が生じる場合があります。

穂先に仕掛けを直接つなげることで感度が大幅にアップ。仕掛けを取り付ける部分が回転するので糸ヨレや糸絡みも防ぐ。

■新触感グリップ

水に濡れても滑りにくく、ホールド性の高い特殊塗装を採用したグリップ。引き抜き時に竿・鮎の重量を支える重要な役割を持つ手尻の信頼感をアップさせる。

■節落ち・食いつき防止合わせ

下節の上部内面に僅かな出っ張り(異形部)を作り、強い密着部分をつくることで実釣時に起こる節落ちを防止する。さらにその異形合わせによる空気層が固着をも防ぐ。

■固着防止リング

固着を防ぐため接合部分に空気層を作る溝(リング)切り加工を、節の太さによって幅と本数を変えながら施す構造。

銀影競技メガトルク
品名 全長
(m)
継数
(本)
仕舞
(cm)
自重
(g)
先径[替穂]/元経
(mm)
錘負荷/替穂
(号)
適合水中糸 カーボン
含有率
(%)
メーカー
希望本体
価格(円)
JAN
コード
 
メタルライン ナイロン
急瀬抜
90・V
9.00 8 143 243 2.0[1.1]
/24.0
0~10/0~8 0.07~0.3 0.15~0.8 99 272,000 116275 *
※先径は、素材先端部の外径です。

さあ・・・来シーズンモデルチェンジになるはずだから
胴調子の竿も視野に入れて!

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